社会の動向をスポイト的にファッションに落とし込む

今季、外せない一つのトレンドがエコロジーで、この意識をファッションカラーに変換したものがインターカラーとしての「緑(Green)」。今季のイタリア提案にあるように、徹底的にグリーンを追求するといった姿勢が強く表れている。日本では、ファッションプランナーの意識として「エコロジーだからグリーン」という単刀直入な発想は乏しいように見える。しかし、欧米の人たちにとってみると、「ファッションこそ社会意識を反映すべき」という発想が強いため、社会動向をファッションに変換するというのは常識なのである。

色即是空空即是色

今季のインターカラーのコンセプトとなったキーワードの一つが「橋(Bridge)」、トルコ提案の解説にこのキーワードの詳しい内容がある。トルコ国内外に於いて数々のファッションやアートのアワードを受賞しているアーティストのトルコ代表ウミット・ウナル、オズラム・シュエル両氏の提案はいつも真剣で社会的である。今季は、仏教の「色即是空空即是色」を発想源に取り上げている。「無形の心」と「有形の物」との間を繋ぐ「橋」の存在を意識する事、詰まりはプロセス。実はそれこそが物作りの根底に横たわっているものであろう。橋の掛け方によって、様々な素材や形へと繋がっていく。物がなければ、心が騒ぐ、夢が広がる。物が多くなると、心はもう騒がない、夢はなくなる。豊か過ぎるが夢の無い現状を打破するには、心と物の架け橋を強く意識しなければならない。